作 り 手 訪 問
作 り 手 訪 問
「標高450mの白糸台地には水がなかった。」
163年前に通潤橋ができるまで、中山間部であるこのあたりはわき水以外に水はなく、荒地だったそうだ。農業どころか風呂や洗濯の水にも事欠くような暮らしで、日になんども辛い水汲みを手伝うのが子どもたちの日課だったという。それを見かねた総庄屋(現在の市長にあたる)の布田保之介(ふたやすのすけ)という人物が、地域の人びととこころを合わせ、2年という長い年月をかけた末についに通潤橋を完成させた。
その日から、水が自由に使えるようになり、いまのじぶんたちの暮らしがある。本当にありがたい。通潤橋のおかげ。なんども、なんども、おふたりからは通潤橋へのお礼の言葉が口に出る。この地では、こうやって代々語り継がれ、通潤橋への感謝を忘れることがないという。下田さん自身が発行に携わった絵本を使って、紙芝居のように説明をしてくださったことで、われわれもまるで昨日のことのように、通潤橋ができた当時の感動と、そのころから変わらない地元の方々の想いを感じることができた。
「下田さん手作りの食事の数々。」
通潤橋への熱い想いをお聞きする間に、雨も小降りになってきたが、お昼どきも過ぎたので、圃場を見学に行く前に昼食にしましょう。と、下田さん手作りの料理の数々がずらりと並んだ。
いちばんに気になったのはミョウガタケ。われわれが食べているのは地下茎で、これはミョウガの茎の部分だそうだ。御浸しにして削りカツオがまぶしてある。見た目は筍のようだが、たしかにミョウガの味がする。昨日採ったフキ、アスパラガス、わらびの酢の物、新玉ねぎのカツオ和え、高菜油炒め、ジャガイモ餅、豆腐団子…。ジャガイモと玉ねぎとキャベツの味噌汁。麹から手作りした味噌と、旬の野菜からでたいい味が溶け合って、とてもおいしい。自家製の柚子胡椒をほんの少し溶かしていただく。
そして締めは、下田さんのお宅で栽培したヒノヒカリ。コシヒカリと日本晴から生まれた品種で、九州では多く栽培されている。上には赤紫蘇のふりかけがふってある。美味い!ほっこり、クセのないやさしい味だ。
最後は柿のシャーベット。「柿を凍らせただけ」というが、自然な甘さがすごい!人口の甘みとはまるで違うのだ。
食事をおいしくいただきながら、草野さんからは、こんな話をうかがった。
「農薬を使わず、
お湯で種もみを消毒。」
種もみは病気の原因になるカビなどに汚染されていることがあるので、一般には種まきの前に農薬で消毒する。しかし、草野さんたちの会では種もみの消毒に農薬を使わず、60度くらいのお湯に浸す「温湯種子消毒」という方法を実践している。たくさんの種もみをたっぷりのお湯に浸漬し、そのあと水で洗い流して冷却することで、イモチ病などを防いでいる。
さて、雨もほぼあがったので、そろそろ腰を上げて、草野さんの圃場と通潤橋の見学へ出かけることにした。
[特別栽培熊本県山都町産ひのひかり]
美しい風景と阿蘇山麓の水が育てた米
五老ヶ滝川にかかる通潤橋と一面に広がる棚田の眺めは、「美しい日本のむら景観百選」に選ばれています。阿蘇山麓の湧水と有機肥料を使い、刈り取り後は低温乾燥。もちもちした食感で冷めても美味しいお米です。
生産者:通潤橋水ものがたりの会